皆様こんにちは。
こちらでは久しぶりの投稿になります。
8月末に第2作となる「やさしく語る 布石の原則」を無事出版することができました。
おかげさまでご好評を頂いております。
今後も執筆活動を頑張りたいと思います。
現在、いくつかの新たなお仕事にも取り組んでおります。
来年に入ってから発表できるかと思いますので、お楽しみに!
また、白石囲碁教室では土曜日の午前中や日曜日などにも営業時間を拡大しました。
前日までの予約限定となりますが、これまでご都合の合わなかった方にもお越し頂けるかと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
ブログ一覧
今後の予定(2017/1/22)
皆様こんにちは。
こちらのブログは、随分間が空いてしまいました。
まずはご報告です。
著書「やさしく語る 碁の本質」は、おかげさまで大変好評を頂いております。
次回作も出版させて頂く予定ですので、お楽しみに!
執筆に力を入れるため、予定していたサービス拡大はしばらく延期させて頂きます。
その代わり、教室の営業時間を拡大して行く予定です。
予約のみという形ですが、日曜日などにもお越し頂けるようになります。
また、第2・第4土曜日の午前中は、継続的にご予約を受け付けます。
ぜひご利用ください。
今年は囲碁AI「Master」の衝撃的なデビューによって始まりました。
囲碁界にどんな変化を与えるのか、注視して行きたいと思います。
本年もよろしくお願いいたします。
今後の予定
オープンから6か月目に入っています。
慣れて来た所で、今後はまた新しい形態の教室を考えています。
朝教室が候補の一つです。
しかしまずは著書の執筆ですね。
執筆が終わるのが9月末予定ですので、それから改めて考えてみようと思っています。
今後とも白石囲碁教室をよろしくお願いします。
会員特典(5/23)
皆様こんにちは。
先日2人目の方に会員になって頂きました。
今後も頑張っていきたいと思います。
さて、この度会員特典の内容が固まりました。
私の公式戦対局の棋譜をお届けいたします。
コメント、参考図を使って詳細に解説しております。
なお、どなたでもご覧頂けるサンプルもご用意しております。
「会員制度について」ページ内をご確認ください。
皆様、今後ともよろしくお願いいたします。
2週間経過
オープン2週間が経過しました。
設備も整い、後はどれだけお客さんにお越し頂けるかですね。
少しずつ知名度が広がってはいますが、まだまだこれからです。
ご見学やお問い合わせも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ!
明日オープン
皆様お待たせいたしました。
明日白石囲碁教室がオープンします。
ぜひお越しくださいませ。
また、営業時間外では見学も可能です。
事前にご相談ください。
なお、皆様がご自由にお使い頂けるウォーターサーバーを導入予定ですが、残念ながらオープンには間に合いませんでした。
4月15日(金)に設置できる見込みです。
もうしばらくお待ちください。
その他の設備では、スマートフォン充電器を各種(iphone、docomo、au、softbank)ご用意しております。
お気軽にお申し付けください。
皆様に気持ち良く対局して頂けるよう心がけてはおりますが、まだまだ至らぬところがあるかと思います。
ご意見、ご要望をお待ちしております。
コンピュータ囲碁について・その13「今後の囲碁界のあり方は」
最終回です。
トップ棋士には是非とも頑張ってコンピュータと戦って頂きたいと書きました。
しかし正直な所、いつまでも同じ土俵に立てるとは思えません。
2045年問題という予測がありますが、そこまで待たずとも人間に到達不可能なレベルにまで達してしまうでしょう。
そうなった時に我々囲碁棋士の対局はどこに価値があるのか、ここでもう一度考え直す機会ではないでしょうか。
ただ強ければ良い、碁の真理に近付けば良いという時代は終わると考えています。
話は変わりますが、今日の大相撲では白鵬対日馬富士の結びの一番が話題になりました。
白鵬の横綱らしくない変化で、注目の大一番が一瞬で終わってしまったというものでした。
白鵬の相撲の是非については、議論もある所だとは思います。
やはり勝負として見れば勝ちたいのは当然ですし、あっさり飛んで行ってしまう日馬富士もどうかと思います。
ただ大事なのはファンは満足しなかったということですね。
表彰式までに多くの観客が帰ってしまいました。
優勝した白鵬自身はともかく、相撲興行としては大失敗でしょう。
囲碁の世界も、ファンのためにプロの対局があるのは同じことです。
プロはファンに楽しんで頂かなければなりません。
プロの棋力を生かして、アマにはできない雄大な構想、ぎりぎりの鍔迫り合い、等といったワクワクするような碁を打たなければならないと思います。
例えば武宮正樹九段の宇宙流は、囲碁界を席巻しました。
豪快に模様を広げ、最後には相手の石を丸ごと取ってしまうなど、なんとも派手な碁でした。
その影響でプロもアマもみんな三連星を打っていたのですから、凄いものです。
武宮九段のおかげで碁が楽しくなったという方は、相当多いのではないでしょうか?
そのレベルに突き抜けるのは難しいと思いますが、魅力的な碁を打ちたいものです。
また、対局者だけでなく解説のあり方も変わっていかなければならないと思います。
プロの対局における解説とは、盤上で何が起こっているか、頭の中で何を考えているのかといったことを伝える役割です。
現在はそれが内容の正確さに拘り過ぎ、レベルが高くなって一部のアマしかついていけない状況になっているように思います。
アマがどういった所に注目すれば楽しめるか、それを伝えることを最優先しなければならないと思います。
さて、長々と書いてきましたが、一つはっきりしていることがあります。
囲碁は数千年間人々を楽しませてきた、素晴らしいゲームです。
この素晴らしいゲームの魅力を伝える役割を得られたことは、とても幸運なことだと思っています。
世界の激変にも負けず、今後も頑張っていきたいと思います。
コンピュータ囲碁について・その12「アルファ碁に勝つためには?」
彗星の如く現れたアルファ碁は、人間のトッププロ棋士を破ってしまいました。
開発者のデミス・ハサビス氏は間違いなく歴史に残る天才でしょう。
しかし、囲碁は数千年の歴史があります。
いずれ完全に上を行かれるにしても、今はまだ人間が頑張れる、一度は人間が勝たねばならないと考えています。
そのためにはどうすれば良いでしょうか?
1、隙を見せない
アルファ碁は、有利な状況を作ると決してそれを手放しません。
心理的な迷いなど一切なく、正確に追い詰めてきます。
そのような状況に追い込まれないよう、気を付ける必要があります。
2、布石は中央重視
これは1と関連します。
力関係で不利になると、必然的に弱点が浮かび上がってきます。
そうならないために、隅に潜るよりも中央重視で、戦闘の石数で不利にならないことが必要になってきます。
3、ヨセでミスをしない
ヨセでのミスは勝敗に直結します。
体力、精神力の問題で人間には厳しい部分ですが、ここを乗り切らねば勝利はありません。
今回、1、2の点で李九段は不利でした。
1に関しては、李九段の棋風が裏目に出ていました。
李九段は自分から仕掛ける棋風ですが、無理をした所を的確に咎められた印象でした。
2、に関しては、李九段はツケ引き定石など、隅の地を稼ぐ展開を選ぶことが多かったです。
しかしそれがアルファ碁の強さを引き出してしまった感は否めません。
3に関しては、これはもう頑張ってくださいと言うよりありません。
しかし、人類対コンピュータという観点からすれば、別の方法も考えられます。
アドバイザーとして他のトップ棋士が控えておくのです。
これによって所謂ポカ、うっかりミスを無くすことができます。
(対局者が着手を仮決定後、アドバイザーがそれにコメントするイメージです)
第1局井山裕太九段+柯潔九段+朴廷桓九段
第2局朴廷桓九段+井山裕太九段+柯潔九段
第3局柯潔九段+朴廷桓九段+井山裕太九段
このような3番勝負は如何でしょうか?
私は、これなら人間が勝てると考えています。
コンピュータ囲碁について・その11「アルファ碁対李世ドル九段・総評」
第1局から第5局まで、アルファ碁の戦力分析は1局ごとに大きく変わりました。
全部見た結論としましては、アルファ碁は長距離ランナーであるということです。
序盤は勢力志向、それを生かして中盤では決して致命傷を負わず、終盤は安定したペースでゴールに辿り着く。
これがアルファ碁の勝利パターンだと思いました。
石を取るか取られるかのような局面では意外にも完璧ではなく、むしろ李九段が自ら体勢を崩したところで止めを刺している印象がありました。
強引とも思われる仕掛けからリードを奪っていく李九段としては、相性が悪かったかもしれません。
コンピュータ囲碁について・その10「第5局、アルファ碁勝利」
最終局、李九段はなんとしても勝ちたかったはず。
とにかく大きなミスを出さないように心がけていたように見えました。
ただ、堅くなりすぎてしまったでしょうか。
http://gokifu.net/t.php?s=8191459001942438
毎日3万局の模擬対局を行っているアルファ碁に流行り廃りは関係ないように思えますが、白12のような最新の手を打っているのが面白いです。
ただ、白16の手によって全く違った意味を持ってきます。
人間のプロは右下に余裕を持たせるために白12を打ちましたが、アルファ碁は碁盤を大きく使うために打っている、と考えられます。
黒17からの仕掛けへの一連の対応からも同様の思想(?)が読み取れます。
黒25までの分かれは互角のように見えます。
右下の地は確かに大きいですが、白も良い姿です。
アルファ碁得意の碁形であろうことを考えると、むしり李九段としては勝ちにくくなったようにも見えます。
しかし、右下白48からの折衝はあきらかに失敗でした。
他の利き筋やコウ材をすべて消してしまいました。
ややこしい攻め合いの読みは苦手なのでしょうか?ここで黒優勢になりました。
しかし黒69はどうだったか?結果的にはこの手が敗因かもしれません。
白70とボウシされると白80までほぼ一本道、ここで黒に迷いが生じました。
黒81では膨らみで問題なかったと言われていますが、対局者としては警戒するのもやむを得なかったかもしれません。
実際に第1局、第3局と予想外の強烈なパンチを貰っているのですから・・・。
ともあれ黒99まで凹まされては白のペースになりました。
そして黒107への対応は流石のものです。
白112の剛手など思い付いても相当打ちづらい手ですが、躊躇なくやっていきます。
かと思えば白124であっさり攻めを放棄してしまう・・・。
このあたりは流れを重視する人間とは根本的に違うところです。
アルファ碁最大の強みかもしれません。
白166までと進み、どうやら白勝ちが確定したようです。
ここからアルファ碁にはミスがありませんでした(白からコウを仕掛けるチャンスなどありましたが、危ない橋を渡ろうとしませんでした)。
李九段としても最善を尽くしたと思いますが、もはやチャンスはありませんでした。
コンピュータ囲碁について・その9「第4局、待望の初勝利!」
圧倒的な強さを見せ付けたアルファ碁。
しかし、弱点はありました。
http://gokifu.net/t.php?s=331458914962039
途中までは全く李九段らしからぬ碁でした。
白22まで十分の布石ですが、黒23への対応からおかしくなります。
黒39まで、すっかり押さえつけられてしまいました。
さらに右辺の白52も信じられない対応。
李九段ならずとも切りたいところなのですが・・・。
結果、中央を丸呑みされては敗色濃厚となりました。
しかしここから奇跡が起こります。
白72の味付けから白78の割り込み!
誰も気付かないような妙手でした。
この一手で急に難解な局面になりましたが、正しく対応していれば黒はリードを保てていたはずです。
しかし、ここからアルファ碁は信じられない乱れ方をします。
まず、大事な黒79の手を間違えてしまいました。
これで白は逆転に成功しました。
それだけならまだ勝負は決まっていないのですが、そこから悪手のオンパレード。
あっという間に白勝ちが決まりました。
まるで白78によって、動揺したかのようです。
他の対局の正確さから考えれば恐らく稀なケースだとは思いますが、大きな弱点であることは疑いのないところです。
意図的にそういう局面に導けるかどうかによって、今後の対アルファ碁での勝率が変わってくるでしょう。
ともあれ、1勝返したことで次もひょっとしたら、という期待が生まれました。
コンピュータ囲碁について・その8「第3局、アルファ碁は中盤も人間を超えている」
第3局は、アルファ碁の強さが最大限に発揮された碁でした。
http://gokifu.net/t.php?s=1641458826753109
黒15と序盤から仕掛けましたが、やや無理だったようです。
白28まで、難なく中央に脱出しました。
白30は、形が頼りないので一見悪そうな手です。
しかし次の手と関連していました。
白32!この手が凄い手です。
とても思いつかない手ですが、見れば見るほど急所に来ているのがわかります。
きつい手を打ったかと思えば、白36とあっさり体をかわします。
しかし黒37の追及に対しては、一転白38の最強手で反撃しました。
変幻自在の打ち回しです。
白76となって、早くも黒絶望的な形勢になってしまいました。
ちなみに白50や白62といった手は明らかに悪手なのですが、その損失は無視できるレベルのものです。
この対局は、連敗して後のない李九段の必死の頑張りが印象的でした。
序盤はそれが裏目に出てしまいましたが、ここからも気力を振り絞って戦います。
黒77は、誰も気が付かないような手です。
ここから無理やり事件を起こして、上辺の白と刺し違えようという捨て身の作戦です。
白はここでも冷静で、90や112とがっちり生きました。
然らばと黒は113から策動し、125に勝負をかけました。
普通では手にならない所ですが、結果的にコウに持ち込んでは大成功といえます。
しかし、残念なことにコウ材が足りず、逆転には至りませんでした。
トップ棋士の中でも特に李九段は戦いを得意にしていますが、その李九段が戦いでコンピュータに遅れを取ってしまいました。
第1局に引き続いてのことですから、これはコンピュータは中盤戦も人間を上回っている、と考えざるを得ません。
コンピュータの戦力分析は更新され、中盤戦までにリードしていなければ人間は勝ち目がない・・・そう思われました。
コンピュータ囲碁について・その7「第2局・ヨセの強さが想定外」
なんとも不思議な一局でした。
http://gokifu.net/t.php?s=371458823244731
黒15、あり得ません(笑)
序盤で決める意味が全くなく、明らかに損です。
話題になった黒37のカタツキですが、多くのプロが驚くほど突飛な手だとは思いません。
しかし、良い手ではないでしょう。
白64、白70・・・慎重な打ち方ですが良くない感じがします。
お互いミスが数手あったようですが、黒129となってヨセに入ったあたりでは黒やや優勢というところのようです。
しかし、ここからアルファ碁がどんどん差を広げていきます。
黒157からのヨセは、簡単には見付けられないないものでした。
白166に対して手を抜いたのも驚きです。
その他のヨセも完璧でした。
ヨセというのは1局の総仕上げであり、ここで勝敗が入れ替わることはよくあります。
しかし、アルファ碁はヨセに入ったらほとんどミスをしない・・・
人間視点で考えれば、ヨセに入る段階ではっきりリードしていなければ勝ち目がないということになります。
この時点で、多くのプロ棋士はコンピュータが人間を超えたと感じました。
しかし、アルファ碁の真価はこれだけではありませんでした。
コンピュータ囲碁について・その6「世界に衝撃走る」
アルファ碁対李世ドル九段の世紀の五番勝負、緒戦はなんとアルファ碁の勝利でした。
世界中のアマやトッププロ棋士、囲碁を打てない方にまで衝撃が走りました。
こんなことがあって良いのか・・・。
可能性としては考えていましたが、やはり実際に結果を見ると呆然としてしまいました。
しかし内容としてはどうでしょうか。
この対局は李九段に油断があったように思えました。
http://gokifu.net/t.php?s=8291458821037868
黒7の手はバランスが悪く、プロが打ちたい手ではありません。
明らかにコンピュータの力量を試した手です。
前例がない手に対してどう対応するか見ようとしたのでしょう。
黒23が恐らく打ち過ぎで、白24からの反撃が強烈でした。
「感覚」で言えば白は無理な形ですが・・・このあたりの強さはディープラーニングとモンテカルロ法のハイブリッドという印象があります。
白82からのサバキは華麗ですが、結果はどう見ても白損です。
白102は李九段も予想しなかったであろう鋭い手ですが、白106は大悪手です。
黒が追いついたように見えました。
しかし黒123が問題で、隅の地を取られて黒負けになりました。
白も130という酷い悪手を打っているのですが・・・黒のミスの方が大きかったようです。
このように、李九段がミスによって負けた印象を持ちました。
よって1敗を考慮に入れてもこの五番勝負は李九段が勝つだろう、と却って希望を持ったのでした。
しかし、その予想は大きく裏切られる結果になりました。
コンピュータ囲碁について・その5「アルファ碁登場」
2016年1月28日、とんでもないニュースが飛び込んできました。
「アルファ碁、プロ棋士に初勝利」
最初は、9路盤で勝ったのだろうと思っていました。
9路盤というのは19路盤に比べて遥かに世界が狭く、プロが負けるのは早いと思っていました(それでも、実際にはプロに勝てていなかった)
しかし聞けば19路盤だということ。
わずかの期間に一体何が起こってしまったのか・・・
慌てて情報を集めたところ、このアルファ碁がディープラーニングの技術を用いていることがわかりました。
ディープラーニングについての知識は殆ど持っていませんでしたが、私はこう理解しました。
「必要な情報だけを抽出する技術」
囲碁でいえば、「良さそうな手だけを考える技術」ということになります。
囲碁の初心者であれば広い盤面の中でどこに打ったら良いのか全くわからないと思いますが、
棋力が上がっていくにつれて「良さそうな手」というのは直感で浮かぶようになります。
コンピュータが直感を身に着けたとなれば、もはや囲碁の広大な世界をしらみつぶしに探索する必要がありません。
コンピュータが人間を越すということは、「直感で」理解できました。
さて、実際に対局を見てみますと、対局者のプロ棋士の方は一般にイメージされるプロ棋士ではないことがわかりました。
私は中国のプロ組織についてあまり知識がありませんが、恐らく現在中国のプロ棋戦に参加しているわけではないと思われます。
棋力としては私に2子ぐらいではないかと感じました。
しかし、その相手に5連勝ということは、アルファ碁は先以上の差があると考えられます。
実際に棋譜を見た感じでは、私に先で良い勝負と感じました。
http://gokifu.net/t.php?s=1031458817521643
白36からの打ち方、こういうことをコンピュータがやるのは初めて見ました。
そして白58!これがまさに感覚の一手です。
従来のコンピュータですと傷を正直に守る手しか打てなかったでしょう。
この手を見た瞬間に、近い未来に人間が負けることは確信しました。
問題はそれがいつなのか・・・。
李世ドル九段との決戦は5ヶ月後ですから、相当な進化を遂げていることは間違いありません。
それでも希望的観測を込めて、李世ドル九段の勝利を予想していました。
コンピュータ囲碁について・その4「そもそもコンピュータにとって囲碁は何故難しいのか」
※私はコンピュータの知識はあまりありません。
あくまで囲碁の専門家としての認識としてお考えください。
碁盤の上の世界は、宇宙に例えられるほど広いものです。
最も普及している19路盤では、初手で打てる場所が19×19=361箇所あります。
では19路盤で何通りの展開があるかといえば、一般的には361!(361×360×359×・・・)で表されます。
細かいことを言えば上下左右対称なので初手は91通りしかないとか、終局までに361手を超える可能性もある、
といったことはありますがとてつもない数字になることだけは間違いありません。
さて、コンピューターを囲碁で勝たせるにはどういう命令を与えれば良いでしょうか?その答えは、
1、しらみつぶしに可能性を検討する
2、パターンを覚えさせる
大雑把にいってこの2つになるでしょう。
1の方法では、膨大な計算と向き合わなければなりません。
20年ほど前、今から見れば遥かに性能の低いコンピュータではとても太刀打ちできませんでした。
よって2の方法がメインでした。
定石、手筋、石の生き死にといった、囲碁を打つ上で重要な要素をデータベース化して引き出す、という方式でした。
ただし囲碁におけるパターンというのは膨大な数が存在します。
また、それにどういった優先順位をつけるかというのは開発者の棋力に依存せざるを得ません。
囲碁ソフトの製作者はあくまで囲碁ではアマチュアであり、結果強いコンピュータはできませんでした。
ところが、コンピュータの性能は急激な上昇を続け、ついに361!に挑んでいく時代になりました。
1の方法をメインにするようになったのです。
開発者の棋力に関係なく、処理速度やプログラムの精度によって棋力アップが進んでいきました。
その結果がプロに3子では勝てないけれども、4子で勝つ・・・立派なアマチュア高段者の棋力に到達しました。
しかし、そこまでが限界でした。
2子、逆コミ、先、互先・・・と書くと互先に近いようにも思えますが、実際には長い長い距離がありました。
何事もそうだと思いますが、頂点に近づけば近づくほど1歩進むことは困難になります。
何といっても361!です。
どんな方法にしろこの壁を越えるのには相当な年月が必要だろう、それが「50年」と予想していました。
そう、2016年1月28日までは・・・。
コンピュータ囲碁について・その3「隣の世界で異変が・・・」
元々ある程度強かったコンピュータ将棋。
コンピュータの進歩と共に爆発的に棋力を上昇させ、とうとうプロ級になってしまいました。
2010年、清水市代女流2冠に勝利。
2012年、米長邦雄永世棋聖(2003年引退)に勝利。
そして2013年、プロ棋士5人との団体戦(第2回将棋電王戦)で3勝1敗1引き分けで勝利。
名実共に人間を凌駕してしまいました。
種目は違えど将棋界と囲碁界は兄弟のようなもの。
将棋棋士の苦悩は容易に想像できました。
ただ、この時点では囲碁界にその時代が来るのはまだまだ先だと思っていました。
2010年、「ERICA」とプロ棋士藤沢里菜初段(12歳)が6子で対局、藤沢初段が勝利。
2012年、「Zen」が武宮正樹九段に5子と4子で2連勝。
2013年、「Zen」が 二十四世本因坊秀芳に4子で負け。
2014年、「Crazy Stone」が依田紀基九段に4子で勝ち、「Zen」は負けて合わせて1勝1敗。
2015年、「Dolbaram」が二十五世本因坊治勲に4子で勝ち。「Crazy Stone」は3子で挑み、負け。
「モンテカルロ法」により、確かにコンピュータ囲碁は大幅に進歩しました。
しかし2012年から2015年にかけては明らかに停滞しており、現在の技術の限界を感じさせました。
1、コンピュータの処理速度そのものをとてつもなく進化させる
2、革新的なプログラムの誕生
人間を超えるにはどちらか、あるいは両方が必要になるのは明らかでした。
私の見積もりはこの時点でも変わらず「50年後」でした。
その理由は、その4にて。
コンピュータ囲碁について・その2「2007年、新時代。しかし・・・」
2007年、第1回UEC杯コンピュータ囲碁大会が開催されました。
この大会で優勝した「CrazyStone」が、プロ棋士青葉かおり四段に8子置いて勝利。
初めてコンピュータとプロ棋士との間で勝負が成立した瞬間でした。
翌年には7子で勝利し、コンピュータ囲碁の進歩を強く印象付けました。
ただ、やはり7子8子という手合いは対等とはほど遠く、プロ側が気楽に打っている印象がありました。
仮に賞金1億円だったら、9子でも負かしていたのではないでしょうか(笑)
「コンピュータの性能がこれだけ上がっても、こんなものか・・・あと50年は抜けないな」
これが正直な感想でした。
コンピュータ囲碁について・その1「1997年」
1997年、スーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」がチェスチャンピオンのガルリ・カスパロフと戦い2勝1敗3引き分けで勝利しました。
人間がコンピュータに負けたということで、衝撃を受けた方も多かったことでしょう。
コンピュータが何でもできるようになる時代が来るのかな、などと思った記憶があります。
しかし、それでも囲碁で人間がコンピュータに負けるという発想は浮かびませんでした。
当時私は13歳でしたがアマ高段者であり、囲碁の深さはそれなりに知っていたからです。
ちなみに当時のコンピュータ囲碁ソフトは非常に弱く、定石にない手には一切対応できないという代物でした。
今の私が対局したら、9子置かせても100目以上勝ってしまうかもしれません。
アルファ碁・AIの新時代
囲碁は人類史上最高に奥が深いゲームです。
今でもそう断言できます。
しかし、信じられないことに人間のトッププロがコンピュータに負けてしまいました。
何故そんなことが起こったのでしょうか?
今後のプロ棋士の目指すべきところは?
そういったことについて記していきたいと思います。